前田敦子が出演している映画『さよなら歌舞伎町』を観た。
特別に前田敦子が好きな訳ではないが、彼女の出演した映画は結構観ている。
『もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』
『苦役列車』
『クロユリ団地』
『もらとりあむタマ子』
AKB48を卒業したエースがどのような仕事をしていくのかは、AKBグループの未来にとっても重要だ。AKBグループに在籍していることが女優になるためにプラスなのかマイナスなのか。両論あって私にはわからないが、前田敦子や大島優子が成功することは、後から続くメンバーの励みになるだろう。
『さよなら歌舞伎町』は面白い映画だった。しかし前田敦子はあまり輝いていなかった。だから「アイドル映画」ではなかった。普通の面白い映画だった。
歌舞伎町のラブホテルで1日の間に起こる様々な出来事を描いた群像劇だ。結構大勢のキャストが出て来るが、それぞれの役が個性的に描かれており、見応えがある。
特に女優陣が素晴らしい。韓国人デリヘル嬢、AV女優、家出娘、不倫中の女刑事、立ちん坊の熟女、そしてラブホテルの清掃係のおばさん。誰もが存在感があり、魅力的だった。
韓国人デリヘル嬢を演じていたのはイ・ウンウという韓国人女優だが、帰国してブティックを開く費用を稼ぐために割り切ってデリヘルの仕事をしているが、その「接客」ぶりは「神対応」だ。満足度が高いというか、慈愛に満ちているとさえ言える。実質的に彼女がこの映画の主演女優だろう。
清掃係のおばさんは南果歩だが、強盗犯の松重豊を匿っているという設定で、映画終盤に見せ場がある。
彼女達の中にあって、われらが前田敦子は一応主演扱いになっているようだが、存在感ではやや見劣りしていたと私は思う。ミュージシャン志望で、デビューするためにレコード会社のプロデューサー(大森南朋)に「枕営業」をするのだが、そこまでしてデビューしたいという切迫感が感じられないし、恋人への後ろめたさとの葛藤もあまり伝わらない。ホテルの部屋で意を決して服を脱ぎ始めるところで場面転換。次のシーンではもう事は終わっていて、プロデューサーは「あんまり無理しない方がいいよ」と言い残して部屋を出て行く。「枕営業」が上首尾に行ったのか、結局デビューできるのかどうかは定かでない。
色々な制約があるのは理解できるが、他の女優達が迷いもなく「体を張った」演技をしている中、もう少し「無理する」ことがあってもよかったのではないか。
前田敦子の恋人役の染谷将太は、一流ホテルのフロントマンからラブホテルの店長に転落し、「ここは自分のいる場所じゃない」という不満たらたらで日々を過ごしている。その鬱屈はよく描かれている。そこに田舎にいるはずの妹がAV女優として現れたり、恋人(前田敦子)が「枕営業」のために現れたりという事件が続く。男優陣の中では彼が主演で間違いない。そして、不満を抱えながらも慈愛に満ちた「神対応」をするデリヘル嬢(イ・ウンウ)が、同僚のデリヘル嬢やマネージャーからも慕われているのと対照的に、染谷はラブホテルの従業員たちから軽んじられている。この対比が映画の奥行きとなっている。
映画のタイトルどおり、最後に歌舞伎町に別れを告げるのがこの2人というのも、実質的にこの2人が主役である証拠だ。
前田敦子は映画の集客のために「主役」扱いされながら、映画の中での存在感は軽く、輝いてもいない。その状況は本人や周囲もわかっているはずで、それを発奮材料にできるか、次の仕事を見てみたい。
主役でなくてもいいので、1編の映画の中でキラリと光る役柄を演じて作品に貢献する、そんな経験を重ねて行ってほしい。もちろん集客することも大きな貢献なのだが、これまでの主演映画の客入りを見ても、AKBグループのファンは映画館にはあまり行かないような気もする。前田敦子ファンで『さよなら歌舞伎町』を観た人はどのくらいいるのだろうか。
特別に前田敦子が好きな訳ではないが、彼女の出演した映画は結構観ている。
『もしも高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』
『苦役列車』
『クロユリ団地』
『もらとりあむタマ子』
AKB48を卒業したエースがどのような仕事をしていくのかは、AKBグループの未来にとっても重要だ。AKBグループに在籍していることが女優になるためにプラスなのかマイナスなのか。両論あって私にはわからないが、前田敦子や大島優子が成功することは、後から続くメンバーの励みになるだろう。
『さよなら歌舞伎町』は面白い映画だった。しかし前田敦子はあまり輝いていなかった。だから「アイドル映画」ではなかった。普通の面白い映画だった。
歌舞伎町のラブホテルで1日の間に起こる様々な出来事を描いた群像劇だ。結構大勢のキャストが出て来るが、それぞれの役が個性的に描かれており、見応えがある。
特に女優陣が素晴らしい。韓国人デリヘル嬢、AV女優、家出娘、不倫中の女刑事、立ちん坊の熟女、そしてラブホテルの清掃係のおばさん。誰もが存在感があり、魅力的だった。
韓国人デリヘル嬢を演じていたのはイ・ウンウという韓国人女優だが、帰国してブティックを開く費用を稼ぐために割り切ってデリヘルの仕事をしているが、その「接客」ぶりは「神対応」だ。満足度が高いというか、慈愛に満ちているとさえ言える。実質的に彼女がこの映画の主演女優だろう。
清掃係のおばさんは南果歩だが、強盗犯の松重豊を匿っているという設定で、映画終盤に見せ場がある。
彼女達の中にあって、われらが前田敦子は一応主演扱いになっているようだが、存在感ではやや見劣りしていたと私は思う。ミュージシャン志望で、デビューするためにレコード会社のプロデューサー(大森南朋)に「枕営業」をするのだが、そこまでしてデビューしたいという切迫感が感じられないし、恋人への後ろめたさとの葛藤もあまり伝わらない。ホテルの部屋で意を決して服を脱ぎ始めるところで場面転換。次のシーンではもう事は終わっていて、プロデューサーは「あんまり無理しない方がいいよ」と言い残して部屋を出て行く。「枕営業」が上首尾に行ったのか、結局デビューできるのかどうかは定かでない。
色々な制約があるのは理解できるが、他の女優達が迷いもなく「体を張った」演技をしている中、もう少し「無理する」ことがあってもよかったのではないか。
前田敦子の恋人役の染谷将太は、一流ホテルのフロントマンからラブホテルの店長に転落し、「ここは自分のいる場所じゃない」という不満たらたらで日々を過ごしている。その鬱屈はよく描かれている。そこに田舎にいるはずの妹がAV女優として現れたり、恋人(前田敦子)が「枕営業」のために現れたりという事件が続く。男優陣の中では彼が主演で間違いない。そして、不満を抱えながらも慈愛に満ちた「神対応」をするデリヘル嬢(イ・ウンウ)が、同僚のデリヘル嬢やマネージャーからも慕われているのと対照的に、染谷はラブホテルの従業員たちから軽んじられている。この対比が映画の奥行きとなっている。
映画のタイトルどおり、最後に歌舞伎町に別れを告げるのがこの2人というのも、実質的にこの2人が主役である証拠だ。
前田敦子は映画の集客のために「主役」扱いされながら、映画の中での存在感は軽く、輝いてもいない。その状況は本人や周囲もわかっているはずで、それを発奮材料にできるか、次の仕事を見てみたい。
主役でなくてもいいので、1編の映画の中でキラリと光る役柄を演じて作品に貢献する、そんな経験を重ねて行ってほしい。もちろん集客することも大きな貢献なのだが、これまでの主演映画の客入りを見ても、AKBグループのファンは映画館にはあまり行かないような気もする。前田敦子ファンで『さよなら歌舞伎町』を観た人はどのくらいいるのだろうか。